劇場版 機動戦士Zガンダム

 ガンダムシリーズ2作目のTVアニメを再構成した劇場アニメ。ガンダムの編集版(ファーストガンダム三部作やSEEDスペシャルエディションなど)の常で新作カットが大幅に追加されているほか、旧作の絵も20年のギャップを埋めるべく大幅に加工処理されている。

 しかし実際に見てみると、「わざわざ見る価値あるのか?」と思うほど薄っぺらい内容だった。ただでさえ密度の濃いTVシリーズ50話を300分にまとめているため、尺が不足していてグリプス戦役の流れを追うだけになってしまいドラマ性に欠ける。またTVの重要エピソードだった「後半でのフォウの再登場」「シャアのダカール演説」「謎の妹キャラロザミィ」がカットされている(そもそも後半で地上に降りるシナリオがないためZガンダムの大気圏突入能力が死に設定に)のは大きなマイナスポイント。あまり重要とは思えないサラがらみのエピソードはしっかり再現…どーいう基準だ? 公開前は「カミーユを好青年として描写する」といわれていたが、実際は大人の政治劇に時間を費やしてカミーユの問題児描写をする暇がなかっただけ。おかげでカミーユが「ただ優秀なだけのパイロット」になってしまい主人公としての存在感が薄い。

 同じ総集編でも、ファーストガンダムは総時間に余裕があり、またTV版にククルス・ドアンなど削れるエピソードが多かったため構成に不満はない。またSEEDの場合Zほど詰まった構成になっていないためシナリオの圧縮が容易という事情がある。尺が足りないと分かっているのだから、元シナリオにこだわらない思い切った構成をしてもよかったように思える。

 TVシリーズの絵は大幅に加工処理されているが、原画そのものが古いためどうしても最新のアニメと比べて見劣りする。同じ予算で完全新作が作れるのではないかと思うが・・・

 ラストシーンのカミーユは精神崩壊する描写がないだけでひねりも何もない。意識を失っていくカミーユにフォウが語りかけるという演出があったほうがよかったと思うが(富野がスパロボやSEEDの真似を嫌がった?)。どういうわけか連邦とアクシズが停戦してミネバが地球に残ったが、姿をくらましたシャアはこれをどう評価するのだろうか? 「ZZ」は論外として「逆襲のシャア」とのつながりも分かりにくい。

 劇場版ファーストは「これさえ見れば初心者でもガンダムマニアの話題に半分ついていける」といえるほどの秀作で、SEEDスペシャルエディションも展開のダルいTVシリーズよりはお勧めできるが、劇場版ZはTVシリーズを知っている人でないと理解できない内容になっている。これからガンダムに手をつけるという人は時間がかかってもTVシリーズを見てほしい。

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